インプラント 治療期間の話題で目覚めたいなら。

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動物か子供か、いずれにしても患者は医者の前に出ると、自らを卑小なものと感じなくてはならないような仕掛けになっているらしいのです。
実際、どんな大学者にしろ、大政治家にしろ、病院のベッドの上でおへそを出している姿はあまり威厳のあるものではありませんが、その分、医療者の側に「威厳」の天秤の目盛りが傾くわけです。
Y・Tさんのような方が「医者は威張っている」といって反発されるのも、どうやら当然のことのように思われます。
茂吉のいう高い薬や高い診察料も、ご医者の権威を高めるための格好の材料であったわけですが、国民皆保険の世の中になって、その効果をあまり期待することができなくなりました。
近ごろ、医者の社会的地位が下落したといわれる理由の一つかも知れません。
現代医学は目を見張るような進歩をとげたものの、物理学や化学などとは違ってまだ全体としては、大変不完全な情報の体系です。
そのうえ医療の場面では、とっさに右か左かの選択をせまられるクリティカルな(きわどい)瞬間が少なくありません。
もちろん、その場合でも判断の基礎となるのは専門的な知識と経験とですが、それだけでは必ずしも十分でなく、それを踏まえた上での、思い切った意思決定が必要とされます。
一種のカリスマ的機能です。
昔から医者が病気になると、医学的知識が豊かであればあるほど扱いにくい患者になる、といわれていますし、患者になった医者自身、あれこれ取り越し苦労をして素人よりははるかにみじめな状態に陥るものなのです。
すがるべき権威を見出せないからです。
したがって医療の場では、今日でもカリスマ性の効用を完全に否定することはできないのです。
いろいろなタイプこの三つの権威のうち、道徳的権威は科学としての医学がどれほど進歩しても忘と、残念ながらそれと引き加えに、ともすると影がうすくなりがちです。
近代的大病院の冷たい肌ざわりは誰しも経験しているところですし、高度技術化とともに医療の非人間化が起こりやすいことはいなめません。
一方、日進月歩の医学の進歩に追いつくことをあきらめて、ほとんどもっぱら道徳的権威者シュヴァイツァについて、数多くの讃辞が捧げられていることはいうまでもありませんが、なかには彼の設立したランバレネの病院の存在がアフリカ医療近代化の大きな妨げであったといって非難した人たちもいます。
マクナイトの『シュヴァイツァを告発する』という本は、その代表的なものでしょう。
シュヴァイツァは蚊や蝿がたかってもピシャリと殺さず、静かに追っはらったといいますから、マラリヤや細菌性の伝染病の多い熱帯地方の衛生・健康のレベルが向上することの妨げとなった一面を完全には否定できないのかも知れません。
とにかく科学的権威を伴わない道徳的権威は、ときとして有害でしょう。
近代医学の象徴のような大病院でもちっとも良くならなかった患者が、街のあやしげな療術師のもとに通ってすっかり良くなった少なくともご当人は良くなったと固く信じているといった場合は稀ではありません。
また、すでに進行してしまった癌などの場合、現代医学の使徒である平均的な医者は、気がとがめてなかなか「必ず治して見せるから、大船に乗ったつもりでおまかせなさい」などとはいえないものですが、ご自分の大発見を確固として信じているから全くないので、真理の使徒であるかのような自信をもって患者に接しますから、そのカリスマ性によって多くの患者を引きつけることにもなりましょう。
このようないろいろな新療法の開拓者が「正統派」医学から無視されたり批判されると、気の毒な、あるいは悲痛な犠牲者、殉教者と一部の信者からは見なされ、ますますカリスマ度が上昇することもあるように思われます。
大変勉強家で新しい医学雑誌にたえず目を通している、もっぱら知的権威を頼りにしている医者が一向はやらず、あまり医学書も読まぬ、酒飲みの豪傑医者がかえってたいそう人気を集め、頼りにされているという場合も珍しくはありません。
今日の科学的医学の時代になっても、人間は、ことに病気に苦しみ悩んでいる患者は気持が落ち込み、ワラをもつかみたい心理状態ですから、どうしても強くカリスマ性にひかれる条件を多分に備えているということなのでしょう。
それにしても知的権威だけの、医学教科書が白衣を着ているような医者も味気ないかぎりですし、そうかといって、親切がすぎてベタベタとお世辞の多い医者も不安なものでしょう。
ましてカリスマ性九五%で知的権威わずかに五%というのでは、医者とはいえません。
乱暴な要約を許していただくとすると、知的権威七〇%、道徳的権威二〇%、カリスマ的権威一〇%というようなあたりが適正比率というところでしょうか。
権威の悪用ところではタソンは取り上げていませんし、それを権威というわけにもいかな。
いでしょうが、一〇〇%金儲け主義の医者が存在すると少なくとも世間の一部で見ているらしいのは残念なことです。
このような医者が存在するとすれば、金儲けのためにこの三つの権威を手段として巧みに利用しているに違いありません。
検査漬け、薬漬けなどというのはまさに知的権威悪用の好例なのでしょうが、このような場合はエセ道徳的権威や過度のカリスマ的権威も同時に適当におりまぜていることはいうまでもありません。
それというのも、科学的医学の時代だといっても医学という学問はまだまだ不完全な情報のシステムであるため、三つの権威が悪用される余地が相当幅広く残っているからでしょう。
善用にしろ、悪用にしろ、自覚しているにしろいないにしろ、医者は権威主義の衣をまとって患者に臨むことになりますから、その一方では、患者はどうしても卑屈にならざるをえません。
Y・Tさんは「お医者の言葉一つで生きもし死にもしそうな気になる病人というものは、つまり独立した人間ではなく医者の従属物なのである」と書いています。
たいていの人は医者の前に出るとおどおどしますし、時には医者や看護婦に知らず知らずのうちに媚びる場合さえあるようです。
医者のご機嫌をとるために、大して良くなってもいないのに「おかげ様で大変良くなりました」などという患者がいないわけでもないので、医者は気をつけなくてはならないのです。
自分自身医者であっても、病気をしてひとたび患者の身分になるととたんに萎縮して、いろいろと気をつかうことになります。
ある精神科の専門医が癌になって入院した時の体験を「私も一人の患者にすぎないと、つくづく思う。患者の立場は弱い。
主治医に反対するときには主治医から突き放されることを覚悟しなくてはならない。
病気からの苦痛と不安と恐怖のなかで患者が独りで生きていくのは難しいことだ。
患者は最後まで主治医に従わざるを得ない。
病いが重くなればなるほど、主治医の方針に逆らって別の医師に替って診てもらうことは難しくなる」と書いています。
私なども、必要があって自分が長く巣くっていたのとは別の病院で受診する時はずいぶん緊張します。
ところが、そのようなことをいったら知り合いの若い医者に「先生なんかずいぶん特権的な扱いを受けているはずなんですよ。一般の患者もその程度だと思ってはいけません」と叱られました。
医療は、いろいろな意味で強い権威主義の構造をもっているというより医者と患者とが手をたずさえて知らず知らずのうちに権威主義的な構造をつくり上げているものであるということを、医療者側は十分自覚していなくてはいけないようです。

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